【自立支援】今年度の活動を総括する分科会を開催しました。

(左から、今井氏@DxP・辻氏@猪名川町教委・大前@猪名川甲英・出口氏@タッチカウンセリング協会・市橋氏@サルビア)

2019年度の猪名川グローカル・自立支援分科会の総括をすべく、委員のみなさまにお集まりいただき、まずは今年1年の取り組みの報告をさせていただいたうえで、次年度に向けた検討をおこないました。

2018年度(初年度)の自立支援分科会では
・特性のある子供の指導に関する教員研修の必要性
・子供にとって複数の相談先がある状態の確保
・学習意欲の高い子供に対するサポート
・二次障害(発達障害から起因するストレスなどから起こる精神疾患など)対策
・芸術教育/異文化交流などのコンテンツの模索
などに取り組むべきであるということが議論されました。

それを受けて2019年度は
児童発達支援事業者による研修
高校生支援NPOのLINE@相談開始
心理カウンセラーによる授業とスクールカウンセリング
「進学対策自習室」の設置
・「マイニチチェック」~二次障害化を防ぐためのシステムを開発
・芸術教育・自然教育に関する識者へのインタビュー/現場視察
関西大学国際部との連携による留学生交流
などをおこないました。

また、次年度は、高等専修学校ならではの自由度を活かしてカリキュラムや時間割をコンパクトにすることで、さらなる外部提携事業や選択授業を充実させることを予定しています。

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【大前繁明】(大前学園理事長)

学校に求められる支援のあり方が変わってきた。
公立の学校と較べて行政の支援が薄いため、加配教員などを充実できない高等専修学校が、特性の強い子供に対する手厚いケアなどがメリットとしてウリにできなくなってきている。
保護者のニーズにただただ応えていくのか、それとも学校が提供する教育やサポートの特徴を積極的に発信していって選択してもらうのか。
これからは前者は行政にあるていどを任せつつ、後者(猪名川甲英の教育やサポートの特徴を発信していく)をおこなっていかなくてはならないだろう。

いまは不登校が低年齢化していって、不登校の小学生なども増えている。本校の農業活動に外部の小学生やオトナの参加も歓迎して学校の取り組みを知ってもらうことや、本校の生徒に刺戟になることなどもしていきたい。

【今井紀明】認定NPO法人DxP理事長:不登校や引きこもりの支援をしているNPO法人)

今年は甲英の生徒に講演をし、「人には特性があり、自覚できているかどうかで楽しめるかどうかが決まる」ことや「先生や親や友達、3つ以上自分が頼れる先や安心できる場所があったほうがよい」ことなどを話した。そのうえで、猪名川甲英とDxPで提携してLINE@での相談対応サービスを開始した。
DxPは定時制高校で授業をしたりしている。オンラインの相談に加えて、定期的なリアルな場での相談やサポートも検討したい。

また、生徒の指向はどんどん多様化していっているので、子供それぞれに合わせた選択活動を充実させる必要性は高まっている。カリキュラムをコンパクトにして外部提携事業や選択授業を充実させることはたいへんよいことだ。
DxPには多方面からの提携の依頼がきている。先日はラップアーティストたちが子供たちのために何かしたいという相談を持ってきてくれた。子供や学校に貢献したい思っている人は増えているので、連携先についてはDxPに相談してほしい。

【市橋拓】株式会社サルビア代表取締役:放課後等デイサービス・児童発達支援)

今年は教員向けにASD/ADHD/LDの概観、アプローチの基本的な方向性などについての研修をおこなった。発達障害への社会的無理解によって、叱責アプローチに至ったり、原因は教育やしつけや環境にあると誤解したりに陥ることが多い。教職員が最新の発達分野の知見を学ぶことは不可欠だ。誤ったアプローチによって二次障害を引き起こしかねない。次年度は、授業視察と個別アドバイスなどをさらにおこなっていこうと思っている。

教員がこれまでの学校教育のやりように縛られすぎかもしれない。教員が課題でないことを課題だと思っている。「カチッとしていていないといけない」と思いすぎているために、「授業中動きが多い/目線をあわせてくれない」などを課題を思っている。それらはたんなる発達障害のあらわれであって課題ではない。むしろ修正しようというアプローチをすることは二次障害などに繋がりかねない。
規律や同調を子供に求めすぎないためには、職員室でも同僚どうしが”求めすぎること/これまでの学校教育のやりよう”から離れる必要がある。

【辻真佐美】猪名川町教育委員会学校教育課:特別支援教育を推進する指導主事)

職員室で”~ねばならない”が多すぎるのが問題だ。公立学校でもとくに大規模校は規律で縛る傾向が強い。それを変えるためにはしくみづくりなどではなく、学校のトップの意識変化が重要。
規律で縛られる既成概念から脱却できた学校では、変化はすぐに子供たちに現れる。そして、その効果を見て、やっと教員たちはその意味を理解する。“教師が既成概念を捨てれば子供が変わった”というモデル事例を見せる必要がある。

【市橋】

学校にはエスケイプできる場所が必要。それがなければ学校に行かないという選択肢しかなくなってしまう。例えば保健室など。「しんどかったら息抜きしてきていいんだ」というだけで、ほんとうに息抜きしなくても安心できるようになったりするものだ。
教師が、問題じゃないことを問題ととらえてしまうことによって問題を作りだしてしまうケースがある。安心できる場所にエスケイプすることを”怠け”や”サボり”と決めつけてしまってはせっかくの場所が意味をなさなくなってしまう。ほんとうのサボりを防ぎたいのであれば「たんなるサボりならだめだよ」と言っておけばいいだけ。

「挨拶は大きな声でしなくてはならない」などの”ねばならない”が子供を縛ってしまいがち。発言することがすごいストレスだという子供が、なんとか苦しみながら発言したときに「よくがんばった!だからもっとがんばろう」などと言ってしまうことで、さらにストレスを強いてしまう。発言をさせなければいいだけなのに。

【出口のりこ】NPO法人タッチカウンセリング協会理事長:心理カウンセラー)

今年は「こころの授業」という、自分のこころを既成概念から開放するワークショップを担当した。各学年(クラス)5回ずつ。クラスを見つつカウンセラーをできたのはとてもよかった。来年度はこちらから誘ってあげたりと、カウンセリングの敷居を低くするくふうをさらにしてあげたい。

とはいえ、打てば響くクラスと、”授業ではない”と思ってなかなか集中してくれないクラスがあった。”打てば響くクラス”は、脱線しかける子に対してリーダー的な存在が「集中しろよ!」などと言ってあるていどリードしてくれるが、そういう存在が生まれにくい。自尊感情が低い子はリーダーシップを取ることをこわがる傾向がある。

【大前】

子供が多様すぎて、相対的に能力の高い子供が学校で持て余している気がする。この学校でリーダーをすることに関心がなくなってしまうのかもしれない。

【市橋】

彼らは”教師-生徒”や”親-子”といったタテの関係が窮屈で、ナナメの関係の存在がサポートしてあげたほうがいいんだろう。

【大前】

クラスを見てくれて感じたことなどを外部の専門家と教員たちとで共有する大きなケース会議的なモノがあったほうがいいかもしれない。
教員たちだけで議論をすると「そういう子供には〇〇するべき」といった”~ねばならない”議論に帰結しがち。

【市橋】

研修では、個に対するアプローチではなく環境アプローチが重要(”発言できるようになれ”ではなく”発言しなくていいような環境を作れ”)と言ったけど、具体的には伝わっていない。研修もだいじだが、具体的な事例についてのアプローチを、環境を動かす側の先生と議論しないと伝わらないようだ。そこには、環境調整の決裁者(校長等のマネジャー)もいないといけない。”やったほうがいいこと”を「やる」と決められる人が議論の当事者に必要。

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予定時間を大幅にオーバーして議論はたいへんな盛り上がりになりました。次年度はグローカルプロジェクトの最終年度になります。それぞれの委員のみなさまいただいたサポートを、どのようにすれば学校のルーティンにスムーズに組み込むことができるかを検討する年度になります。

DxPによるLINE@の相談や、出口さんによる「こころの授業」とスクールカウンセリングなどを継続しつつ、今年開発に取り組んだ二次障害予防システム「マイニチチェック」の運用が始まります。それに加えて、この議論の中から出てきたように「専門家と教員の合同によるケース会議」やDxPによるリアルのサポートもやっていきたいと考えています。

さらには、芸術関連のカリキュラムの開発や、関西大学国際部とのコラボ事業進学対策自習室の選択授業化などにも取り組み、”これまでの学校のアタリマエ”から脱却して、猪名川甲英ならではの特徴的な教育プログラムの開発を進めてまいります。

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