【自立支援】発達に課題のある子供たちへの対応について教職員の研修を実施(7/2、7/27)

猪名川甲英には生きづらさを抱えてきた子供たちが在籍しています。そのなかには、発達の偏りのある子供もいます。

猪名川甲英の教員たちはこれまで、専門知識や技術よりむしろ「丁寧な指導」や「センス」によってそうした子供たちに接してきました。クラス内で子供たちがサポートし合う環境を醸成することで子供たちに再チャレンジを促してきました。その状態に、さらに各分野の専門家の高度な知見を付加することで、技術的合理的根拠のある指導を構築していくため、今年度から教職員に対して外部の専門家による研修を実施することを始めました。

研修を担当していただいたのは、株式会社サルビアの代表である市橋拓(いちはしひろし)さんです。株式会社サルビアが運営しているサルビアジュニア(放課後等デイサービス・児童発達支援事業)では、発達に偏りや遅れがあったり、集団生活に困り感があったりする子供一人ひとりにあった支援を計画し、マンツーマンで療育をおこなっている教室です。

市橋先生は猪名川グローカルプロジェクト・自立支援分科会のメンバーでもあり、昨年度の分科会での議論でも、専門性の高い意見をいただいていました。猪名川甲英の教職員に対して、発達障害まわりの概観の話と、それぞれの子供へのアプローチのヒントについて、2回の研修をお願いしました。

「個」と「環境」の間にある生きづらさが障害です。これまでは「個」の能力や機能から起きるとする考え方(医学モデル)が主流でした。しかしいま世界的に障害に対する考え方が変わってきていて、「個」ではなく「環境」にアプローチすることによって生きづらさを解消していく考え方(社会モデル)になってきています。

車椅子の人が階段しかなくて駅を利用できないのは、エレベーターがないという障壁のためであり個の能力のために社会的不利益があるのではなく、社会との障壁の為に不利益があるという考え方です。特性を抱えた人も強みを活かして活躍できる環境を作っていくことが求められているのです。

なぜか極端に片付けられない人やなぜか極端に忘れ物をする人、それは昔なら「だらしない人」で片付けられていました。みんなと同じことをするのがどうしてもできない人、それは昔なら「協調性のない人」で片付けられていました。それを正すように叱責され、それができないことで「ダメな人」と評価されてきました。むしろ、現在でも多くの環境でそういう扱いを受けて、つらい思いをしている人がいるでしょう。また、発達障害の原因は親の教育や躾や環境にあるとも考えられていました。しかし、いまではそれは脳の育ち方のばらつきであって個性であることがわかっています。

教育現場でも、そういった専門的知識がなければ、繰り返し叱責することでそれを正そうとしてしまったり、親と面談して親の責任を問うたりしてしまったりするでしょう(むしろごく最近まではそういう教育があたりまえになされてきていました)。だからこそ、教職員が最新の発達分野の知見を学ぶことは不可欠なのです。

ASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害)とはどういうものかの概観から、それぞれへの適切なアプローチの基本的な方向性などについて、研修していただきました。これまで教職員が指導に苦労していた子供たちについても、「もしかすればあの子はそういう傾向が強いのかもしれない」と考えることによって、これからの子供たちへのアプローチは変わってくるでしょう。発達障害を抱えた子供についても、個と環境へのアプローチによって、それぞれに合った環境で育つことができれば、より強みを活かして社会で活躍できます。そしてそれは甲英の教育理念とも完全に一致する考えかたです。

研修の最後に、子供の特性に気づかず、子供が生きづらさを抱えて失敗経験を重ねてしまうと、鬱や統合失調症といった二次障害(後天的に精神障害などを発症すること)になってしまいます。
今後は二次障害の兆候やメンタルヘルスについても考えていく必要があるという内容もお話されました。

精神障害者(発達障害者も精神障害者保健福祉手帳に含まれる)が急激に増えているこれからの社会において、身体障害者の方々の力を発揮するためのハード面の進化だけでなく、発達障害や精神障害など目に見えにくい障害に対する寛容さや適正に応じた環境設定などへの理解というソフト面の進化が求められるという話で締めくくられました。2回の研修は、甲英の教職員たちにとって、改めての認識を得るものから、これまでの認識を改めるものまで、多くの気付きがありました。これからは、個別の子供への対応についても、より適切なアプローチができるよう、サルビアジュニア/市橋先生にこれからもサポートをいただくことになっています。

Follow me!