【地域連携】一度途絶えた地域の夏祭りを学校と地域の協力で復活(8/24)
猪名川甲英のある阿古谷の農村は他の農村地区と同様に少子高齢化しています。若い人と子供が減り、阿古谷小学校は2013年の3月に140年の歴史を閉じました。
日本の地域において「小学校」とは、たんに子供が勉強する施設だということに留まらない意義を持ちます。小学校は地域のみんなの故郷であり、みんなが集う村の中心です。西洋で教会がその意義を果たすように。その、地域の小学校の廃校は、地域は人々にとってどれほどの喪失だったでしょう。
夏祭りは、盂蘭盆会の行事であり、夏季の農事の疲れを労る行事であり、帰省に伴って懐かしい人々の出会う行事です。そしてなにより、休みの子供たちが楽しみにしている行事でもあります。しかし、その祭りの準備は地域のボランティアによって支えられるため、大変な負担でもあります。地域の人々が「子供たちも楽しみにしているんだから」と力を合わせて準備をしてくれているものです。その、村の子供たちが集う小学校は閉校になり、地域の人々が楽しみにしていた夏祭りは途絶えてしまいました。
猪名川甲英高等学院は、旧阿古谷小学校の廃校跡活用事業として2016年に開校しました。小学校がなくなった阿古谷の村にやってきた猪名川甲英を、地域は心から歓迎してくれました。地域の一員として迎え入れられた猪名川甲英は、地域に対して「また夏祭りをしよう」と声がけをしました。途絶えてしまったかに見えた夏祭りは、「一年の休止」を挟んで、地域と学校でともに開催する事業として復活しました。学校の教員も生徒も、その担い手として祭りを支えよう、と。
2019年は復活して4回めの阿古谷ふれあい夏祭りです。生徒たちに呼びかけたところ、なんと全生徒の半数以上にのぼる約50人がスタッフに名乗り出てくれました。彼らは夏休みに祭りの前々日から学校に集まり、「焼きそば」「焼き鳥」「フランクフルト」「地域活動部のカレー」「クッキング部」の班に分かれて役割を決め、それぞれの班についた先生といっしょに準備をはじめました。唯一の心配は天気。地域の人たちが盆踊りの櫓を組んでくれているときにも雨が降っていました。
さて当日。心配された雨も止んでいます。
まずは、集合した生徒たちに先生が訓示をします。「あくまでも君たちはもてなす側。地域の人たちに楽しんでもらうという意識を持ってやってください」
地域の人たちはステージや提灯や受付のセッティングを、生徒たちは自分たちの模擬店の準備です。特に、参加してくれた有志生徒たちのぶんも焼かなければいけない焼きそば班は早くからどんどん焼いていきます。
開始時間早々からたくさんの参加者で会場は大賑わいでした。櫓の上で太鼓を叩くのも甲英の生徒です。町長もおいでで、最後の盆踊りまで会場はとても盛り上がりました。
農業実習と同じで、こうした“イベント”はそれぞれの子供たちが得意を活かせるすばらしい機会です。甲英の子供たちの多くは、なんらかの苦手を抱えている子供です。中学生まではそれが理由で自己肯定感を持ちきれなかった子供たちもたくさんいます。しかし、甲英で学ぶなかで、「苦手を抱えてはいるけれどそれはみんな同じだ」ということ、逆に「自分にも得意だってあるんだ」ということ、そして「みんながそれぞれの得意で誰かの苦手を補い合おう」ということをしぜんとできるようになってきています。
「誰か運んでくれ~」と声をかければしぜんと力持ちが名乗り出てくれますし、ヌケモレの多い人がいても必ず誰かよく気の付く人が嫌な顔ひとつせずカバーしてくれます。多くの人がすぐ飽きてしまうような単純作業を黙々としてくれる人、恥ずかしがらずに元気に声を出してくれる人、それぞれが自分たちの得意を発揮しようとがんばってくれます。
祭りの片付けが終わったあとの子供たちの顔は、たんに「お祭りではしゃいで楽しかった」というだけではなく、「自分も自分の得意で地域のお祭りに貢献できたんだ」という満足感で輝いているようでした。
【↓祭の準備から終わりまでのようすはこちら。】