文部科学省委託事業|地域×生徒×農業 — 専修学校を核とし相互課題を解決するネットワークの構築

【自立支援】進学対策自習室(1/23)

猪名川甲英高等学院にくる子供たちの多くは勉強が苦手な子たちです。学校のカリキュラムの中でも、つまづいたところから落ち着いて勉強をし直せるくふうがされていますし、授業のレベルもたいへん易しいものになっています。さらには「勉強が苦手なことによって自己肯定感を失ってしまっているなら他に得意を探そう」ということを高校3年間の重要な目標に置いています。農業という中学までには馴染みがなかったはずの新しい分野に挑戦することや、農村地域の人々のさまざまな活動に参加することは、その趣旨に沿ったものです。

しかし、甲英の子たちのすべてが勉強がキライなわけではありません。苦手ではあるけれどそれを克服するために落ち着いて勉強をしたいという子もいます。また、中にはべつに勉強が苦手ではない子もいますし、大学進学を目指してがんばりたいという子もいます。そういった子たちにとってはむしろ甲英の授業や勉強ではもの足りないと感じることでしょう。

そのため、勉強に取り組みたい子のための「進学対策自習室」を今年から実験的に開設することにしました。週に一度の放課後に、3年半個別指導塾で講師として勤めてきた大学生にきてもらっています。生徒はいつ来てもいいし来なくなってもいいし来続けてもいいです。基本的には塾のような「講義」をするのではなく、自分で勉強したいものを持ってきて自習するのが前提です。何を勉強したらいいのかわからなければ、そこから相談することもできます。
最大の目的は、勉強する方法じたいや、大学入試対策のやりかたじたいの相談に乗ってもらうことです。
・学校の勉強がわからない
・勉強のやりかたがわからない
・大学受験を検討しているが何から始めたらいいのかわからない
・大学受験のために自分で勉強を始めたがわからないところがある
・受験対策の小論文や自己推薦書の書きかたを教えてほしい
そういう子供たちのための自習室兼相談室です。

きょうは、この自習室の先生を担当していただいている大阪大学人間科学部4年林田昂大(あきひろ)さんにお話をお伺いしました。

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学校の勉強がわからない子、大学受験を検討しているが何から始めたらいいのかわからないという2年生、受験対策を始めているので小論文/自己推薦書の書き方を教えてほしいという3年生などいろいろな子が来ます。たんに話し相手のオニイサンと思って来る子もいます。大学受験を考えている子は、この学校の勉強ではぜんぜん足りないということはわかっているので、何をすればいいのかという相談が多いです。ほんとうに受験をしたいのならこの学校の勉強だけでは難しいので塾にいったほうがいいです。毎週来ながら勉強方法や塾のことなどを教えてあげているうちに塾で勉強を始めて来なくなる、という子たちもいました。自分のやりかたを見つけて来なくなるのはいいことだと思っています。学力にコンプレックスを感じているけれどもけっこう賢い子もいます。アドバイスも指導もちゃんと理解できるんだけど考えかたを知らないだけだったりします。

2年生からちゃんと準備をすれば大学受験はできます。だから、2年生の初めのころから、選択肢としての大学受験を認識してもらい、受験を検討している子がおれば、2年の夏くらいにオープンキャンパスなどに誘導してあげるといいと思います。勉強でも推薦でも、対策の始めが遅いとできることが限られてしまうので、意識づけのスタートが早いほうがいいです。
大学受験を検討している子の中には、意外に具体的な志望校などを考えている子もいます。そういう子とは、いっしょにWEBで学校のことや過去問のことをネットで検索してあげます。私が調べて対策を教えてあげるのではなく、対策の調べかたじたいを教えるようにしています。
週に一度の進学対策自習室では、勉強のやりかたや考えかたなどは教えられますが、学力アップまではしてあげられません。日ごろの勉強によって学力はアップされるものなので、学校のほうで予備校のシステムなどと連携したり導入したりしてあげるのも一つだと思います。

この学校の子供たちと会話をするなかで感じるのは、進路を真面目に考えることじたいが恥ずかしいと思っているふしがあることです。中学までに勉強でつまづいたり不登校気味だった子には「自分がアホだ」と思い込んでいる子もたくさんいます。「アホな私が大学なんて嗤われるだろう…」と思ってしまっています。見ているとそれほどでもないのに。もしかしたら親や中学までの先生から「高校に行けないから高等専修学校にいくしかない」とか言われ続けてきたからかもしれませんね。かってに「高等学校にいっている他の子たちはすごくアタマいいんだろう」と思い込んでいたり。まずは自己肯定感の欠落に対応することが必要かもしれません。

いまの大学受験では自己推薦書を書いて審査してもらうようなものも増えてきています。だから、この学校での特徴的な取り組みやそこでの成長のことをきちんとアウトプットできればいい自己推薦書が書けると思います。そもそも自分自身がこの学校の意欲的な取り組みに共感してこのプロジェクトに参加しているわけですから。しかし、ここでの学びの意義に気づけていない子がたくさんいます。彼らには、ここでの学びで得られるものがどれほど価値のあるものなのかを認識してもらえるしつらえが必要かもしれません。

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学校でも「勉強に対する意欲の強い子供」「大学進学を目指している子供」に対する次年度以降のサポートは強化していこうと考えいます。林田さんにサポートしていただいた「進学対策自習室」の実験を踏まえて、次年度以降の施策を検討中です。