文部科学省委託事業|地域×生徒×農業 — 専修学校を核とし相互課題を解決するネットワークの構築

【地域連携】60年ぶりに農村の獅子舞を復活させた先輩と、それに憧れて入学してきた後輩と(9/21)

1年生の的場達也くんは、地域活動部の活動でこの夏から獅子舞の練習をしています。指導してくれているのは2年生と3年生の上級生たち。彼ら上級生たちは去年、学校のある阿古谷地域のお年寄りに教えてもらって、この獅子舞を学びました。

入学してすぐに地域活動部に入部した的場くんは、自己紹介でこう言いました。
「テレビで甲英の生徒が獅子舞をやっているのを見て入学を決めました。入学したら地域活動部に入ってぼくも獅子舞をやりたいと思っていました」

自分も同じように舞いたい。そして地域の人達に喜んでもらいたい。
去年の秋に獅子舞を舞った地域活動部の上級生たちはびっくりしました。自分たちが取り組んできたことが、この阿古谷の学校に入学したいとまで思ってくれる後輩を生んだことに。

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地域活動部は、猪名川町や阿古谷の農村地域の課題に取り組むことで、地域の活性化に貢献する部活動です。地域の人たちとお弁当を食べながら交流する活動の中で、3年生(当時2年生)の榎本竜大くんは、昔この上阿古谷地域に獅子舞の伝統があったことを知りました。しかし継承する若い人がおらず、約60年も前に途絶えてしまっていました。地域のお年寄りたちからの「もう一度見たい」という声を受けて、彼らは猪名川町役場主催の「未来を描く高校生フォーラム」で伝統文化の継承を提案、その提案が町長賞を受賞したことで、獅子舞復活の活動が本格化しました。

しかし、その当時の舞のことを知るのはたった5人の80代の方々だけ、薄い記憶をたどりながらご指導いただき、夜に稽古や自主練習を重ね、ついに秋祭りで皆様に獅子舞を披露することができました。60年ぶりの復活です。

<地域の人に教えてもらう榎本くん(去年)>

舞を終えると、地域の方々から温かい拍手と言葉をたくさんいただきました。中には、懐かしさのあまり涙を流すお年寄りも。阿古谷のみなさんのご支援と生徒たちの努力なしにはたどり着けない成果でした。


<秋祭りで地域のみなさんの前で、見事に披露できました(去年)>

さて、今年になって入学してきた的場くんが呼びかけるようなかたちで、再び獅子舞の活動が始まりました。とはいえ、地域の方々にこれ以上負担をかけるわけにはいかないので、生徒たちだけで練習するしかありません。去年地域の方々に教えてもらった上級生たちが今度は教える番になりました。去年撮影したビデオと地域の方に作っていただいたメモ、そして何より練習を重ねて村のみなさんの前で踊った先輩たちの指導が教材です。
榎本くんたちは「獅子舞を舞う先輩たちがかっこよかったので甲英に入学した」と言ってくれた後輩のために、受験勉強の合間を縫って指導してくれています。

地域活動部は、自分たちが少子高齢化する阿古谷の村に活力になりたいと思っています。とはいえ、「少子高齢化へ対応」と言っても、移住する人を誘致するというのは一筋縄ではいきません。なので、彼らは「関係人口の創出」を目標としています。たんに観光で訪れるだけではなく、この村に何らかの営みを持つ人たち。ここで働いたり、ここで定期的な活動を共にしたりする人たち。そして、この村にある学校に通う自分たち猪名川甲英の生徒も、関係人口を構成する重要な一つです。
地域活動部の活動を通じて、「地域の人に喜んでもらう活動がしたい」という生徒が入学してきました。何十年途絶えていた村の伝統を、3年前に阿古谷にやってきたいちばんの”新参者”である猪名川甲英が引き継ぐことで阿古谷地域に貢献していきたいと思っています。


<獅子舞の復活に取り組んだメンバー(去年)>

この秋にも、猪名川のどこかでこの獅子舞を披露する機会があるはずです。そのために的場くんたちは一所懸命練習しています。きっとこの先、また的場くんたちの活動を見て阿古谷に来てくれる若者もあらわれるはずです。そうすれば、今度は的場くんたちがその若者に獅子舞を教える番です。猪名川甲英は、いちばん若い阿古谷の一員として、この村の伝統を引き継いでいきます。